2か月ぶりに東大泉児童館で「ことばのかたち工房」が開催されました。前回9月12日の工房では、女子たちの「ファッションショー」の猛威に完敗した我々。はたしてリベンジは成ったのか!?
前回の敗北を受けて、「ことばのかたち」の制作システムを抜本的に改善しました。作業工程を「古着解体」「設計」「制作」の3段階に分業し、古着の解体や設計図の試作や小道具の制作など事前準備を徹底。さらにものほし竿を使って素材をつるすなど、空間の使い方も大胆にアレンジ。
※ちなみにこれ、水都大阪水辺の文化座3大工房(「かえる工房」「スキン工房」「ことばのかたち工房」)から大きなヒントをもらっています。
準備は万端!当日を迎えます。9時過ぎに児童館に入って、机を設置したり材料を並べたりしているそばから子どもたちの攻撃は始まります。「あ、ごめーん」とか言いながら、せっかくつるした素材を外したり、「ファッションショーするからどいて!」と命令したり・・・。
めげずに、模造紙を広げて「設計図かくぞー!」と意気込むと、「おれがやる!かせ!」とペンを奪い、お決まりの「スーパーうんちくん」をゲラゲラ笑いながら描き始めます。
むむむ・・・負けてられるか。「おれは<開放感>を描きたいんだ!なんかキラキラしたもの、ドガーンって感じのものがいい」と主張してみると、それに呼応し「あぁん!?」とわめきながら、爆発的にペンを走らせてできたのが、これ。
これはなかなかいいな、ということで、この小5の大将が描いた絵をモチーフに、「おれも手伝うよ」と言ってくれた中2の男子と一緒に制作をすることに。大将は子分をいじめながら模造紙をくしゃくしゃにして暴れていましたが、何とかそのドローイングの部分だけを守り、制作開始。
この日、最も印象に残っているのがこの中2のイケメンの大活躍。彼とは長い付き合いで、小6のころから知っています。当時は荒くれ者だった彼が、驚くほどの落ち着きと手際をみせてくれました。
「花火」をイメージして<開放感>をつくるのですが、「みんなの考えを盛り込んでいこうぜ」と言い、工房にいる一人一人に素材の色やくっつけ方のアイデアをもらっていきます。
「ねーねー、あたしも手伝いたい!」「じゃあ何か布選んでくれ」
「白でもいい?へんかな?」「おまえが好きな色ならなんでもいいよ」
「この色微妙だな、はずすか?」「いや、それだとあいつの考えが見えなくなる」
数々の名言とともに、かつてないほどの集中力で制作に取り組んでくれました。ぼくらスタッフと小学生の間に中学生が入って指揮をとってくれたのは、とてもうれしかった。
さて、そんな「ことばのかたち工房」ですが、毎回数えきれないほど様々な出来事が起きています。しかし、すべて書こうとするとものすごく長文になってしまうので、今日はもう一つだけ。
今回初めて導入した「物干し竿」と、服から採れた「紐」を使って「くものす」を一人でつくった男の子の話です。
彼は、みんなが集中しているときにラケットをもって「卓球しよー」と言うような大物で、この日も持ち前のマイペースっぷりを発揮していました。
しかし、僕たちスタッフはみんな作業に没頭してしまい、卓球をする余裕はなく、彼は欲求を募らせていき、ペンを持ってスタッフの服に落書きしようとしたり、解体した服のパーツを投げたり、物干し竿をいじってはしゃいだり・・・
と、そうする中で何かひらめいたのでしょうか?俄然、モードを切り替え、何かつくりはじめました。ひも状のパーツを集め、結び、物干し竿の支柱に絡ませ、網目をつくっていきます。
「くものす!」
彼はそう言って、今度は小さなクモをつくりました。前足をひもに引っかかるようにして、巣の上を移動できるくクモです。出来上がった「くものす」について自慢げに説明する彼は、いつものワカランチンではなく一人の作家でした。
ぼくらの予期せぬところで、予期せぬものが出来上がった。それは単なる遊びだ、と言ってしまえばそれまでだけど、でも遊びの中の創造力が目に見える「かたち」になって現われた瞬間だった気がします。
そんなこんなで、たっぷり2000字。ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。この日の出来事は、「工房ふりかえりメモ」としてスタッフがまとめたものがありますので、ご興味がある方は事務所に遊びに来た際にでも見ていってください。
※この文章の中では、個人名を出さないようにしています。正直「小学生」「中学生」あるいは、「子ども」「大人」という区分にも違和感を覚えながら文章を書いています。彼らとぼくらの関係を言葉で表現するのは、とても難しい。ここで使った「彼ら」/「ぼくら」の二分でさえあいまいなところがあります。「分類」とは、難しいものです。イニシャルで「A君」とかって書くようにしたらいいのかな?迷うところです。