2009年9月19日土曜日

9月17日(木) まちのロビー。墨東まち見世2009



9月17日、「東京アートポイント計画」のメイン事業、「墨東まち見世2009」が開催される、向島エリアに行ってきました。

目的は、劇作家の岸井大輔さんが繰り広げる「墨東まち見世ロビー」を体験しにいくこと。なかなか活気のある商店街の中でもひときわ異様な存在感を放つその空間。両サイドの黒板には、子どもたちが立ち寄って絵を描いていくそうです。



「ん?なんじゃ!?」と思って立ち寄る人たちに岸井さんは声をかけ、商店街で買ったお茶やお菓子をふるまって、お話をします。と言っても、自分の活動を説明するのはわずかで、相手のやっていることや興味のあることを自然に聴きだしていきます。さすが「劇作家」。そこでの出会いから即興的に演劇を作り上げているのですね。この空間と岸井さんのふるまいから、関係性の網目が町の中に広がっていくような、そんな浸透圧のある岸井さんの「作品」。必見です。


左端が岸井大輔さん

そんな墨東まち見世ロビーですが、実はこの日「アーティスト・インの条件」というタイトルのトークイベント(というか座談会)が行われていたのです。一応話す人は岸井さんと僕。お客さんは5人。でも、お客さんとスピーカーの住み分けなんか本当にどうでもよくなってくる素敵な座談会でした。

第1部では、アーティスト・イン・児童館の活動紹介と、その考え方の紹介。



第2部では、「アーティスト・インの条件」の本題。「まちなか」にアーティストを投入する「東京アートポイント計画」ですが、これは本当はどうあるべきなの?という議論を、岸井さんと東京文化発信プロジェクト室の石田さんが熱く繰り広げていきます。「素人/趣味がいい/玄人ウケ/すごい」という4段階のざっくりした岸井さんの分類は適格。[趣味がいい]は、なんか面白くなるかも!といろんな人に予感させられる人。[玄人ウケ]は展示をして作品だけで威力を発揮できる人。[すごい]は、アートに興味が全くない人にも、面白い!と思わせることができる人。「[趣味がいい]と[玄人ウケ]の中間ぐらいの人たちがまちなかで多く活動しているように思うけど、本当は[すごい]のレベルじゃないとまちなかで活動しちゃいけないと思う」という彼の意見にも納得。



そんな話で熱くなっていたら、ひょんな来客。日本の北端から自転車の旅をしてきた2人が到着!南端からくる別のグループと、このロビーを待ち合わせ場所にしていると聞いた途端に、岸井さんは早速お茶を出し、石田さんは隣のてんぷら屋でてんぷらを買ってふるまう。「あざーっす!」ともぐもぐ食べる。あっというまにロビーの日常に溶け込んでしまう始末。なんとも不思議なこの感覚。

そんな即興ホームコメディをはさみつつ、第3部。ここからは、岸井さんを中心とした話題。「東京のアートに必要なものは何か?」という議論です。この結論、逆説ですが「アートは必要だ、という実感が必要」というもの。実感とは、体験、イメージ、言葉によって生まれるという岸井さんの説明はとってもわかりやすい。では、一体アートとは何か!?という話になります。つくること、表現すること、逸脱すること、いろいろありますが、要するに人間にとって普遍的な行為なのかなと思います。でもそれに対して意識的であるかどうか…アートとそうでないものを隔てるのは、それだけのことなのでしょう。

まとめとして、「東京アートポイント計画の課題」を明確にして、トークを終わりました。その課題とは、東京のまちなかで繰り広げられる様々な活動を、いかにそれがアートであると説明するのか。「あぁ、前衛なのね」というしょっぱい了解をされるのではなく、「つくること」「表現すること」の意味を「アート」という括弧の中で多くの人と共有することができるのかどうか。

うーん、ぼくらとしてはたぶん関わった人たちが楽しければ何でもいいのだけれど、「アーティスト・イン・~」と言って、アートを語る以上、それをアートとして説明できなきゃ恰好がつかないと。しかし、岸井大輔さん、相当面白かった。何が面白いかは、会いに行けばわかります。ぜひぜひ皆様、墨東まち見世ロビーへ足を運んでみてください。






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