2009年1月18日日曜日

第6回 ことばのかたち工房 1月17日



こんにちは。

アーティスト・イン・児童館 実行委員会の菊地みぎわです。今回は私からことばのかたち工房のことをお伝えしようと思います。はじめての投稿なのでドキドキしながら書いています。

今日はスタッフが7人という大所帯でにぎやかに工房がスタートしました。
それぞれ「身軽」「タンスの順番」「体にしっくりくる長さ」「紆余曲折」「過去の夢」「仲間の印」のことばのかたちを作り始めていると、いつものように子どもたちがやってきます。
子どもたちがやってくると、いつもの「何やってんのー?」から始まりますが、ここ1、2回は壁に貼ってあることばを指して「どれ作ってるの?」と聞いてくる子や、『一緒に作りませんか?』というポスターを作ってくれる子もいて、ことばのかたち工房をその子なりに受け止めたり、自分なりのかかわり方をしようとしてくれているのだなぁと感じました。

昨日ある男の子がかいてくれた「身軽」の設計図をもとにして、スタッフが作業に取り掛かろうとしていると、さぁ作るぞ今日はやるぞという雰囲気でその男の子がやってきました。
彼のように設計図をかいてイメージを膨らますというのもいいなと思い、今日は紙を何枚か用意しておきました。それを見つけた高学年の男の子たちが何をしたかというと…。紙ひこうきを折りはじめたのです。これは予想外というか、私たちの詰めが甘かったために、設計図をかくために用意した紙はたちまち紙ひこうきへと変わってゆくのでした。
設計図をかいてくれた男の子はその光景を横目でみながら作業に取り掛かります。彼は「身軽」をかたちにしたい、でも紙ひこうきという魅力あるものでも遊びたい、という2つの想いの中で葛藤していたように思います。
そして彼は、古着で紙ひこうきを作るという素敵なひらめきをし、行動にでたのです。Yシャツのように少しパリッとした素材を選び、スタッフに正方形の作り方を教えてもらいながら布を切り取り、折り目をつけてグルーガンで固定すると、ちゃんと紙ひこうきのかたちになりました。
しかし、問題は飛ぶかどうかということです。工房を出て飛ばしてみると…。 なんとひこうきは飛んだのです。正直なところ、布でつくったひこうきは飛ばないのではないかと思っていた私たちは驚きを隠せませんでした。
そしてその”布ひこうき”が、もともとのコンセプトとしてあった気球を引っ張ったらどうかというアイディアが生まれ、「身軽」ということばのかたちができあがりました。
彼はそのあとも工房で古着を切ったりくっつけたり結んだり…と存分に遊び、その後の片付けも手伝ってくれました。そんな彼が帰るときになんとなく名残惜しい気がしたのは私だけではなかったと思います。

今日の午後はいつもより子どもが少なく静かなスタートでしたが、スタッフが黙々と作品をつくっていると ぽつりぽつりと子どもたちがやってきます。
私は「紆余曲折」を仕上げ、他のスタッフがとりかかっていた「塩」のことばのかたちの作業に加わりました。最初は「塩」ということばから「汗」を連想し、布を小さく切って結んで「毛穴」のかたちを作っていました。そこへ1・2年生の女の子が「私もつくりたい」と遊びに来てくれました。「塩」について聞いてみると「小さくて丸い」「海の水みたいにしょっぱい」ということを教えてくれたので、みんなで布を小さく切って結んで丸い形をつくり、平面に貼り付けて海みたいにしようということになりなした。無数の塩をつくるのに、古着を切る人、結ぶ人、グルーをつける人、「塩」を貼る人と、見事な連携プレーで「塩」のことばのかたちができました。

「体にしっくりくる長さ」ということばのかたちをつくっているスタッフがイメージがまとまらず、一緒に考えていると、最近縄跳びをがんばっている女の子が近くにいました。彼女に縄跳びの縄を体にしっくりくるようにするにはかどうするかと尋ねると、体に合わせて縄を調節すると答えてくれました。私も小学生の頃に縄跳びをがんばっていたときがあって、縄を結んで長さを調節していたことを思いだしました。「結ぶ」「調節」「天女の羽衣」「包帯」「ひも付きの手袋」というキーワードがあがり、そこからことばのかたちができました。

「タンスの順番」は、タンスを並べることで順番ができるのではないかということで、まずは大きさ・高さ・色の濃さと目に見える変化で順番を作っていこうと作業にとりかかっていました。そこへ女の子が、わたしも作りたいと手伝ってくれることになり、そのタンスを使う人の年齢の順番(1番大きいのはおじいちゃん、次がおにいちゃん、1番小さいのが妹)を、タンスの中身をつくって付け足していました。そして作る過程でも小さいものから順番にできあがっていったようです。
タンスがまるでミニチュアの家具のようだったことから連想したのか、その横ではベッドをつくっている女の子もいました。

ことばのかたち工房では使う素材が古着、道具がハサミとグルーガンというように作品を作る条件が限られています。すると、柱や箱のように硬さ・頑丈さ・直線を出したいものを作りたいときに、「こうゆう風にしたいんだけど布だとちょっと無理かな、できないかなぁ。。。」と思ってしまうことがあります。
しかし、ここではたくさんの人と一緒に作ったりおしゃべりしたりすることでアイディアがうかんだり、遊びの中から生まれたものなどをうまく作品に取り込むことでなんとか理想や目標に近づいていくことが多くあるのです。 最初のころは平面の作品が多いように思いますが、今では立体にすることも難なくこなしてしまいます。
今日、古着で作った紙ひこうき(布ひこうき)が飛んだ時、私は「もはや布でできないものはないのではないか」と思わされました。そして次のことばのかたち工房がより楽しみになるのでした。

次回は来週金曜日、1月23・24日です。
どんなことばのかたちができるのか今から楽しみです。